設計について
計画当初
私は風の抜けや採光を取るために建物の一部を減築する事をテレビ局側に提案しました。
何度かやり取りする中で、既存平面の間取りを大きく変えない!
という方針で計画を進めることになりました。
当初私は、この方針に内心落胆している部分もありました。
設計者として環境をよくするなら減築して風と光を取り込むのが良いと感じていたからです。
当然間取りを変えず、構造体をいじらなければコストアップ要因にはならないのですが、減築して構造体の解体あったとしても予算内に収まると考えていました。
テレビ局サイドにとっては1000万円を切るローコストで知恵と工夫をちりばめて、という第二の施主の要望に沿う形で計画が進みました。
床下の環境
土間、床下の調湿、通風、断熱も既製品を使わずローコストで賄うように地元の窯元から素焼き砕石やら石膏陶器の型を譲りうけました。
通常でしたら炭、調湿材を購入します。
既成のものは科学的データーでの根拠が出ていますが今回の材料仕様は、その材料が持つ性質事態を調べて調湿効果があると確信できるので安く手に入るもの、使われなくなったものを再活用するという試みでした。
譲っていただいた方も倉庫に眠っていて処分に困っていたものが甦って、一石二鳥でした。
壁の断熱
既存の土壁を落としてしまうと修復、処分にかかる費用、工期も余分にかかること、土壁はお隣さんと併用されている壁ということもあり、土壁の調湿機能を殺さずに通気と断熱、内部結露をしないように調湿シートも入れています。
結果的には既存土壁を生かした内断熱と外断熱を施す、二重断熱構造になっています。
大壁と真壁
もともと日本の伝統的な在来工法でこの建物も、柱間で壁を納める真壁構造でしたが、断熱の問題ともう一つ耐震補強の要素を入れて大壁にしています。
町屋の特徴として、両隣(東西方向)は、壁で仕切られて耐震上有効な壁がありますが、南北方向は開口部が大半で壁がありません。
耐震上バランスが悪いですが、通風採光を確保するためにも開口部を塞ぐことは許されません。
そこで南北の一階開口部の上部桁と梁を一つして合成梁として梁成を大きくし、耐震上丈夫なフレームにして強度確保を行いました。
間取りと柱と補強
これまでの間取りを変更しないでリビング空間を広くするには、既存の一本の柱をとる必要がありました。
その柱を取ると柱間が二間以上飛びますので鉄骨の梁を補強して、柱を抜きリビング空間の広さを確保しています。
生活スタイルと間取り
- 改修する前の間取りで手狭に感じるスペースを区切らずワンルームとして使えるようにすること
- 台所、水回りの位置を変えないこと
- 生活動線を変えないこと
- おばあちゃんの生活は一階ですべて完結できること
以上の方針を守りながらの計画になりました。
二階の間取り
天井板を取り払い、小屋組みを表しにして、視覚的にも二部屋が続きの間としてつながるようにしています。
主の活用が息子さん、お孫さんの来訪時の宿泊として利用されることから、改修も最小限にとどめてコストをかけないようにしています。
建具はすべて再利用
二階はコストへの配慮から改修の項目を極力減らし、クリーニングして再利用を心がけました。
- ふすま、障子建具は再利用
- 北側外部に面している障子はサッシュと併せて断熱を考え、障子をアクリルに入れ直しサッシュと併せた二重構造にして活用しています。
廊下の床板
採光床としている部分は床板を取り外し、二階から光が落ちる部分を作りました。廊下の半分は床板をそのままのこしています。
思い出と肌触り
- 身体と接するところや手が触れる部分
階段手摺、床、階段踏板 - 視覚的な思いで
天井板、照明、小屋組み、床柱
を残しながら、新しくするところと元あるものがマッチングする事に心がけました。