周囲の景観に馴染んだ「高山らしい」新しいしつらえ高山信用金庫 駅西支店

  • 【全景】高山の町屋出格子をモチーフにした「木調縦ルーバー」は、西向きの建物を西日から遮断する役目を担っています。建物とルーバーの間には、ダブルスキンの考え方を応用した中間層が設けられており、断熱サッシや断熱ガラスに加えて、建物の断熱性を一段と高めています。ルーバーはピッチ調整により必要採光が確保でき、建物にその時々の表情を与えています。
  • 【入り口】建物の入り口には、バリアフリーに配慮したスロープが設置されています。入り口の両サイドには温かみのある高木のランドスケープが施され、敷地入り口の低木のランドスケープと共に、敷地に入る時と、建物に入る時の二段階で、お客様を「お迎えする」という気持ちが表現されています。ランドスケープは稲田純一氏担当。
  • 【風除室】入り口からロビーの間には、雪の多い当地の気候に配慮した風除室が設けられ、ロビーに直接外の空気が流れ込まないように配慮され、断熱効果を高めています。ルーバーと建物との間の中間層に施されたランドスケープの緑が、風除室のガラス越しに眺められ、外からやって来た人々をほっとさせる空間に仕上がっています。ランドスケープは稲田純一氏担当。
  • 【ロビー】ロビーは、町屋出格子のこげ茶色をモチーフにした外の木調ルーバーのイメージとマッチして、古都としての「高山らしさ」を感じさせる落ち着いた空間になっています。OAフロアには床暖房が装備され、廊下とトイレには自動照度調整照明器具を採用するなど、省エネにも配慮されています。ロビーのアクセントになっているチェアは、高山でリプロダクトされた北欧復刻家具。家具は(株)キタニ担当。
  • 【ロビー】ロビーには、合わせガラスが採用されています。障子紙のような印象を与える合わせガラスは、完全に外界と遮断されずに、プライバシーを保ちながら外の気配を感じることができ、ロビーに明るさとゆるやかな開放感を与えています。強度の高い合わせガラスは割れにくく、信用金庫という業種に要求されるセキュリティ性も高めています。ガラス越しに見えるランドスケープが、四季折々の表情で来客の目を和ませています。合わせガラスは辻井硝子建材(株)担当。
  • 【ランドスケープ】外のルーバーと建物との間の中間層に施されたランドスケープは、高山の町屋の中庭空間を連想させます。外でもなく内でもない中間的な緑の空間があることで、建築のニュアンスが広がり、外界の自然環境との有機的なつながりを感じさせています。ランドスケープは稲田純一氏担当。
  • 【ランドスケープ】ルーバーの内側と外側のランドスケープは、シックなルーバー構造に彩りを添え、建築とランドスケープの一体感をもたらしています。植栽は、高山の自然と連動し、四季の変化が楽しめるようデザインされました。華やかで温かみのある混栽のランドスケープは、季節の香りを運び、訪れる人々の関心を集めています。ランドスケープは稲田純一氏担当。

高山信用金庫 駅西支店は、JR高山駅裏開発に伴い、高山市の新市街地の玄関口に建設されました。西側に面する幹線道路の西之一色花岡線は、文化交流の主軸となる道路であり、東側には駅西広場や交流広場が面し、イベントや交流活動でも利用されています。このような立地にふさわしく、高山信用金庫駅西支店は、「高山らしい」伝統や風土に基づいた要素と、市民への「親しみやすさ」を備えつつ、地元企業をリードする先進性を踏まえた企業イメージが表現されています。

高山の人々にとって馴染みのある、こげ茶色の町屋出格子のモチーフは、建物全体を西日から遮へいする「木調縦ルーバー」として生まれ変わり、とかく無機質になりがちな鉄骨建築に、温かみと周囲の景観に馴染んだ品格ある落ち着きを醸し出しています。建物と同調し、立体感をもたらしているランドスケープの緑と共に、「高山らしい」しつらえが高山の玄関口の新しい顔となっています。

高山市景観デザイン賞「緑のある修景の部」奨励賞受賞(2010年)

延べ面積 710㎡
構造・規模 鉄骨造2階建て
竣工 平成21年4月
撮影 XIU企画